「年収を上げる交渉がしたいけど、よく分からない」
「仕事でもよく他部署からやらなくていい仕事を引き受けてしまう」
30代では調整や交渉ごとが増えていきますし、頼まれごとも多くなる時期ですので、交渉力の向上は必須スキルといっても過言ではありません。
相手との関係性があれば、うまくいくかもしれない問題も、初対面や関係性がないから不利な状況になってしまうという方はぜひ最後まで読んでください!

この記事では、交渉力を上げたい人向けに、再現性のあるネゴシエーションの方法について、解説します!
交渉力はどんなときでも使える能力なので、ぜひ活用できるようになってください!
交渉力のフレームワーク


この章では、交渉力のフレームについて、解説していきます!
こうした知識が頭の中にあるだけで、交渉の筋道を整理することができるので、あたふたしづらくなりますよ!
まず、専門的な話に入る前に、次の画像を見てください。

商品を値札価格で売りたい小四郎さんと120円くらいまで値切りたい鶴子さんの交渉です。
この交渉では、お互いの「裏事情」のことは分かりません。
この後、それぞれ解説しますが、この図で交渉用語だけ先にお伝えしておきますね。
では、それぞれ解説していきましょう!
RV(Reservation Value)
交渉の中で「これ以下では合意しない」という最低許容ラインをRV(留保価値)といいます。
例の解説
先の例でRVはどうなるか考えてみましょう。

鶴子さん側の裏事情を見ると残金150円ですので、最低限許容ラインは「150円以下」となります。
一方で、小四郎さん側の裏事情は原価が110円ですので、RVは「110円以上」としたいのですが、
ここで裏には友久さんがいることに注意が必要です。
小四郎さんからすると、140円以下になりそうならこの交渉を止めて、友久さんに売るため、
140円以下にする必要がありません。
小四郎さんのRVは「140円以上」ということになります。
ただし、友久さんがいなければ、繰り上げが発生せず、最初の原価通り「110円以上」がRVとなります。
留保価値を交渉で活用する方法
- 自分のラインを守る:
- 自分の留保価値を交渉の基盤とし、それ以下の条件を避けます。
- 例: 提示された年収が自分の最低ライン以下であれば、交渉を断る。
- 相手の留保価値を探る:
- 質問や情報収集を通じて相手の最低許容ラインを推測します。
- 例: 「予算範囲についてもう少し具体的に教えていただけますか?」などの質問。
- ZOPAを見つける:
- 双方の留保価値を基に、共通の合意点を探します。
- 譲歩の戦略を練る:
- 留保価値に近づく際には、相手に譲歩を促す代わりに追加の条件を提示します。
- 自分がどこまで譲歩できるかを知ることで、交渉を効率的に進められます。
- 交渉中に不利な条件を受け入れてしまうような感情的な判断をするリスクを減らします。
- 自分の最低ラインが明確であれば、交渉の強気な姿勢を維持できます。
BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)
交渉における最良の代替案のことをBATNA(バトナ)と言い、これを持つことが、交渉力の基盤となります。
例の解説

先ほどRVで解説しましたが、友久さんがBATNAにあたります。
この例では、小四郎さん側に新たに勝久さんを追加しました。
同様に考えると、小四郎さんはこの交渉で145円以下にまけてあげる必要がないため、勝久さんに売ります。
つまり、RVはBATNAの中で最大の選択肢になるというわけですね。
RVのところで解説しませんでしたが、RVはBATNAがあれば、RV=BATNAになる点にも注目しておきましょう。
使い方
- BATNAを明確にする:
- 自分にとって交渉が決裂した場合の最善の選択肢を定義します(例:他社からのオファー、別の契約先)。
- 相手のBATNAを予測する:
- 相手が交渉を断った場合の代替案を考え、どこまで譲歩する余地があるかを見極めます。
- BATNAを強化する:
- 自分の代替案をより魅力的にすることで、交渉における立場を強化します。
- BATNAが強いほど、強気の交渉が可能です。
- 相手のBATNAが弱い場合、優位に立てます。
ZOPA(Zone of Possible Agreement)
合意可能な範囲(双方の希望条件が重なる部分)をZOPA(ゾーパ)といい、交渉時にはこの領域を特定していきます。
自分のRVと相手のRVの間で発生する範囲で、ZOPAが存在しない交渉は、その場で決裂とならざるをなくなります。
例の解説

先ほどZOPAで解説した例に、新たに鶴子さん側に中西商店というBATNAを追加しました。
これにより、鶴子さんは130円以上支払う必要がなくなりました。
つまり、それまでは145円以上150円以下でならもしかしたら交渉次第だったこの交渉は、
145円以上130円以下という条件の食い違いが発生し、ZOPA(交渉可能範)がなくなったということになります。

使い方
- 自分の最低条件と最高条件を定義:
- 例: 年収交渉の場合、最低受け入れ可能額と理想額を設定。
- 相手の条件を予測:
- 可能な限り、相手の希望や条件の範囲を推測します。
- 共通領域を探る:
- 自分と相手の条件が重なる部分を見つけ、そこに合意を持ち込みます。
- ZOPAが存在しない場合、交渉は決裂する可能性があります。
- ZOPAを探るためには相手の情報を引き出すスキルが重要です。
交渉の解説
先ほどの例で交渉のポイントを見てみましょう。

小四郎さん側からは、鶴子さんのRVもBATNAも見えない状態からスタートします。
ここで、押さえておくべきは自分のRVとZOPAの存在です。
ここでは、145円がRVで、ZOPAが発生するとしたら、145円以上ということになります。
鶴子さんが提示した120円はRVではないので、その120円という提示か会話の中からRVを探ることになります。
そこで大事になるのは、「鶴子さんのRVを事前に調べて知っておけるかどうか」です。
もし、事前調査で知っておければ交渉は楽になります。
そして、もうお分かりの通り、自分のBATNAが多いもしくは、強いほど交渉は有利になります。
ZOPAが発生していれば、その範囲の中で交渉を決定すればよいですし、発生していなければ、その交渉は打ち切りとなります。

ここまで交渉のフレーワークについて解説しました!
まとめると次の通りです!
まとめ
- RV(留保価値)は、交渉における最低限の条件のことを指す
- BATNA(最良の代替案)は、BATNAがあれば、RV=BATNAとなる
- BATNAの中で最も強い代替案が、RVとなる
- ZOPA(交渉可能範囲)は、発生していなければ打ち切りとなる
交渉で使える心理テクニック


ここまで交渉のフレーワークについて解説しました!
まとめると次の通りです!
テクニック名 | 効果 |
---|---|
アンカリング効果 | 最初に提示した数字や条件が基準点(アンカー)となり、その後の交渉に影響を与える。 |
ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩の原理) | 最初に大きな要求をし、断られた後に小さな要求を出すと、相手が応じやすくなる。 |
フット・イン・ザ・ドア | 小さな要求から始め、徐々に大きな要求へとステップアップする。 |
ラベル付け効果 | 相手を特定の性質にラベル付けすることで、その性質に基づいた行動を引き出す。 |
ミラーリング | 相手の言葉や態度、仕草をさりげなく真似ることで親近感を高める。 |
社会的証明 | 「他者も同様に行動している」という事実を提示することで、相手の決断を後押しする。 |
希少性の原理 | 人は希少なものや機会に価値を感じる。 |
一貫性の原理 | 人は一貫した態度や行動を維持したいという心理を持つ。 |
ロス・アヴェルション(損失回避バイアス) | 人は利益を得るよりも、損失を避けることに強い動機を持つ。 |
リフレーミング | 相手の認識を変えることで、提案の受け入れやすさを高める。 |
対比効果 | 2つ以上の選択肢を提示し、一方を魅力的に見せる。 |
サンクコスト効果 | 人はすでに費やした時間や労力を無駄にしたくないと考える心理がある。 |
1. アンカリング効果
最初に提示した数字や条件が基準点(アンカー)となり、その後の交渉に影響を与える。
使い方
- 自分から最初の条件を提示して、有利な基準を設定する。
- 例: 「希望年収は700万円です」と高めに提示し、相手がその基準を意識するようにする。
- 相手から提示されたアンカーが不利な場合、明確な理由を示して修正する。
注意点
- 過度に高すぎるアンカーは相手の信頼を損なう可能性があるため、現実的な範囲を提示する。
2. ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩の原理)
最初に大きな要求をし、断られた後に小さな要求を出すと、相手が応じやすくなる。
使い方
- 高めの条件を提示し、相手が断った後で本命の条件を出す。
- 例: 「昇給額を20%増やしてほしい」と言った後、「それが難しければ10%で構いません」と提案する。
注意点
- 最初の要求が現実離れしていると逆効果になるため、現実的な範囲で大きな要求を設定する。
3. フット・イン・ザ・ドア
小さな要求から始め、徐々に大きな要求へとステップアップする。
使い方
- 相手にとってハードルの低い要求を先に受け入れてもらい、その後に本命の条件を提示する。
- 例: 「業務範囲の拡大をお手伝いします」と申し出た後、「その成果を基に昇給を検討していただけますか?」と持ちかける。
注意点
- 最初の要求が相手にとって負担にならないよう配慮する。
4. ラベル付け効果
相手を特定の性質にラベル付けすることで、その性質に基づいた行動を引き出す。
使い方
- 相手をポジティブに評価することで、期待通りの行動を促す。
- 例: 「あなたの公平な判断を尊重しています」と伝えた上で、条件交渉を進める。
注意点
- 誠実なラベル付けである必要があり、過剰なお世辞は逆効果。
5. ミラーリング
相手の言葉や態度、仕草をさりげなく真似ることで親近感を高める。
使い方
- 相手の言葉遣いや話し方を自然に模倣する。
- 例: 相手が「この案件は重要です」と言えば、「確かに、この案件は重要ですね」と返す。
注意点
- わざとらしい模倣は避け、自然さを心がける。
6. 社会的証明
「他者も同様に行動している」という事実を提示することで、相手の決断を後押しする。
使い方
- 同様の状況で他者が選んだ例を挙げる。
- 例: 「同業他社では、このスキルに基づいた昇給が一般的です」と伝える。
注意点
- 提示する証拠やデータが信頼できるものであること。
7. 希少性の原理
人は希少なものや機会に価値を感じる。
使い方
- 提案が限定的であることを強調する。
- 例: 「このスキルを活かせるのは現在のプロジェクトが最適です」と伝える。
- 自分が交渉のために使える時間やリソースも限られていることを示す。
注意点
- 希少性を誇張しすぎると信頼を損なう可能性がある。
8. 一貫性の原理
人は一貫した態度や行動を維持したいという心理を持つ。
使い方
- 相手の過去の発言や行動を引用して、一貫性を促す。
- 例: 「以前、成果に応じた昇給を重視されるとおっしゃっていましたよね」と確認する。
注意点
- 相手の発言を正確に引用し、誤解を避ける。
9. ロス・アヴェルション(損失回避バイアス)
人は利益を得るよりも、損失を避けることに強い動機を持つ。
使い方
- 提案を受け入れない場合のリスクや損失を明示する。
- 例: 「この昇給が実現しない場合、優れたパフォーマンスを維持できなくなるかもしれません」と伝える。
注意点
- 損失を強調しすぎると、ネガティブな印象を与えることがあるためバランスが重要。
10. リフレーミング
相手の認識を変えることで、提案の受け入れやすさを高める。
使い方
- 相手にとってポジティブな視点を提示する。
- 例: 「昇給はコストではなく、将来の投資だとお考えいただけませんか?」と視点を変える。
注意点
- 相手の価値観やニーズを理解し、それに沿ったリフレーミングを行う。
11. 対比効果
2つ以上の選択肢を提示し、一方を魅力的に見せる。
使い方
- 最初にあまり魅力的でない条件を提示し、その後に本命の条件を提示する。
- 例: 「昇給額を5%ではなく10%にするほうが、成果に見合った条件ではないでしょうか?」
注意点
- 最初の条件が現実的でなければ、相手の信頼を失う可能性がある。
12. サンクコスト効果
人はすでに費やした時間や労力を無駄にしたくないと考える心理がある。
使い方
- これまでの交渉の進展を強調する。
- 例: 「ここまでの話し合いで、お互いに良い方向に近づいていると思います」と伝える。
注意点
- 相手が感じる「成果」を明確に示す必要がある。

交渉に使える心理テクニックを紹介しました!
いくつかを組み合わせて使ってみると効果的ですので試してみてくださいね!
交渉の発展形フレームワーク


上の章では、交渉の基本構造について解説しました!
しかし、現実の交渉はいろいろな条件も絡んできますし、勝ち負けだけがゴールではありません。
基本は変わりませんが、発展形を知ることで幅が広がるので、いくつか紹介しておきますね!
7要素フレームワーク(ハーバード流交渉術)

フェーズは往ったり来たりするので要素として理解しておくと便利ですよ!
関係(Relationship)
交渉相手との信頼関係や感情的なつながり。
- なぜ重要か: 短期的な結果だけでなく、長期的な関係を良好に保つことで、将来的な交渉の成功確率も上がる。
- 具体例:
- 攻撃的な態度を避け、相手を尊重する姿勢を見せる。
- 対応方法:
- 積極的に相手の意見を聞き、共感を示す。
- 感謝や敬意を表す。
コミュニケーション(Communication)
双方が互いに情報を共有し、意思疎通を図るプロセス。
- なぜ重要か: 情報の行き違いや誤解を防ぐことで、交渉の効率と結果が向上する。
- 具体例:
- 自分の要求を論理的に伝え、相手の話をアクティブリスニング(積極的傾聴)で聞く。
- 対応方法:
- 「具体的にはどうお考えですか?」などの質問で相手の意図を引き出す。
- オープンで明確な言葉遣いを心がける。
利害(Interests)
表面的な主張(ポジション)ではなく、当事者が本当に重視している根本的なニーズや関心事。
- なぜ重要か: 表面的な要求に囚われず、本質的な利害を理解することで、双方が満足する解決策を見つけやすくなる。
- 具体例:
- ポジション: 「昇給が必要です」
- 利害: 「生活水準の向上」や「努力に対する適切な評価を得たい」という根本的な理由。
- 対応方法:
- 「なぜそれが必要なのですか?」と問いかけて、相手の本音を探る。
選択肢(Options)
双方が合意可能な解決策の選択肢を広げるプロセス。
- なぜ重要か: 解決策が一つしかないと交渉は硬直するが、複数の選択肢があれば柔軟に合意に至りやすい。
- 具体例:
- 昇給が難しい場合、代替案として「研修機会の提供」や「リモートワーク日数の増加」を提示。
- 対応方法:
- 複数の選択肢を準備し、交渉中にクリエイティブなアイデアを提案する。
基準(Standards)
合意内容を公平かつ客観的にするための基準やデータ。
- なぜ重要か: 合意が公平に感じられると、双方が受け入れやすくなる。
- 具体例:
- 市場相場データ、業界の慣行、法的基準などを活用。
- 「同業他社の平均年収がこれくらいです」と提示。
- 対応方法:
- 事前に信頼できるデータを収集し、交渉中に根拠として使う。
BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)
交渉が決裂した場合の最良の代替案。
- なぜ重要か: BATNAを知ることで、自分の留保価値(最低許容ライン)を設定し、無理な妥協を避けられる。
- 具体例:
- BATNA: 「他社からのオファーがある」「プロジェクトを辞退して別の業務に集中する」など。
- 対応方法:
- 自分のBATNAを明確化し、相手のBATNAを推測する。
合意(Commitment)
最終的な合意内容や約束を具体的にする。
- なぜ重要か: 曖昧な合意は後々のトラブルを生む可能性があるため、詳細を明確にする必要がある。
- 具体例:
- 合意内容を文書化し、双方で確認する。
- 「この条件で合意する場合、次のステップはこうなります」と具体化する。
- 対応方法:
- 最終的な条件を確認し、書面で共有する。
- 将来の行動計画や期限を明示する。
GIVEモデル(Gain, Interest, Value, Expand)
交渉における付加価値を創出するフレームワーク。
Gain(利益)
相手と自分が何を得たいのかを明確にする。
例: 自分は昇給、相手はプロジェクト成功を重視している。
Interest(関心事)
相手の隠れた関心や動機を探る。
例: 相手が早期完了を重視している場合、追加の報酬条件を提示。
Value(価値提供)
相手に提供できる価値を考える。
例: 自分のスキルやリソースが会社にどれだけ貢献するかを示す。
Expand(拡大)
双方にとってメリットのある選択肢を広げる。
例: 短期的な昇給だけでなく、役職やスキルアップの機会を提案。
交渉力の3P(Prepare, Probe, Propose)
交渉の流れをシンプルにまとめたフレームワーク。
Prepare(準備する)
必要な情報を集め、目標と戦略を設定。
自分と相手のBATNA、ZOPAを理解しておく。
Probe(探る)
質問を通じて相手のニーズや関心を引き出す。
「具体的にどの点が重要ですか?」などの質問を活用。
Propose(提案する)
自分の条件を明確にし、相手にとっても受け入れやすい案を提示。

ここまで交渉の発展形フレームワークを解説しました!
まとめると次の通りです!
まとめ
- 7要素フレームワークはフェーズごとで、考えることがまとまっているフレームワーク
- GIVEモデルは、交渉における付加価値に重点をおいたフレームワーク
- 交渉力の3Pは流れを押さえるためのフレームワーク

理論はなんとなくわかったからあとはやってみるんだなぁ~

日常生活のどこでも交渉は発生しうるので、ぜひ意識してやってみてくださいね!
交渉力をつけて、状況をコントロールできるようになりましょう!!
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