「ストレスのせいで、パフォーマンスが発揮できている気がしない」
「これくらいは乗り越えるべき。でも、最近しんどい」
ストレスは仕事をしていると大なり小なり、誰しもが抱えるものです。
あまりにも負担が大きくなると、病気になったり自分を壊すきっかけになったりします。
でも、そんなストレスも成長のために必要だったりするんですね。
なぜなら、成長とは「できなかったことができるようになる」ことでもあるのですから。
では、自分を壊さずに成長を目指すにはどうしたらよいのでしょうか。
私自身も大きく悩んだことなので、乗り越えるべきストレスと、なんでそれが発生するのか、簡単な解消の仕方について調べました。
30代ならではのストレスというのもあるはずなので、向き合い方を間違わないようにこの記事で確認していってくださいね。
ストレスについて知ろう

ストレス環境について
令和4年の労働安全衛生調査(実態調査)によるとストレスを感じている労働者の割合は82.2%でした。
残念ながら、現代ではほとんどの人が何かしらのストレスを抱えているということです。
どんな種類のストレスを感じることが多いかというと、総計で仕事の失敗が1位。仕事の量が2位となっていたようです。

特に30代では「仕事の失敗や責任の発生」という項目が非常に顕著に出ていることが分かりますね。
更に、仕事の量でも30代はストレス感が強いようです。
下の世代の教育目的で、チェックとミスのフォローをしながら、20代の頃よりも広範で責任のある仕事のリードを求められる。
でも、上の40代50代は「自分も通ってきた道だから」と良くも悪くもプレイングはしてくれず、突発的に口だけ出すものだから、元々自分で考えていた方向と食い違いが生じて、元々の段取りから軌道修正する調整業務が増えてしまう。
気づけば、本来なら出来てたはずの仕事が出来ておらず、失敗という烙印を押され、それでも責任のある次の仕事はひっきりなしに出てくるから、落ち込んでる暇もない。
人を増やしてくれればいいのに、採用は上手くいかない。人事は何をしてるんだ。最終面接で落とすなんて上層部は人を増やしたくないのか。。。
私自身経験したことですし、周りからもこんな話をよく聞きます。
30代にかかる負担は最も高いものであるというのは間違いないのだと、納得してしまえる資料ですね。
出典:令和6年版厚生労働白書
ストレスとは
そもそもストレスがどういうメカニズムで発生するかを確認しておきましょう。
一般的に、ストレスは「外部からの刺激によって生じる様々な反応のこと」を言います。
もう少し具体的にしていきたいですね。
ストレスをもたらす原因のことは「ストレッサー」と呼ばれ、
ストレッサーと出会ったときに自分の対処能力を超えたと感じるときに、体や心に反応として表れるのがストレスとなります。

ストレッサーという外部刺激を評価してストレスになるかどうかは、認知能力が「自分の力で対処できる」と判断するかどうかが基準になると言われています。
つまり、「自分でその状況をコントロールできると思えるかどうか」というのがストレスになるならないの基準になるということですね。
「部下が思い通りに動いてくれない」よりも「自分が残業しないといけない」の方がストレスは少ないのではないでしょうか。
自分でやる方が楽ですし、何より思い通りに動いてくれない部下は、次を何をしでかすのかも分からないですからね。
仕事の責任や失敗が、年代が上になるとストレスにならなくなるのは、
権限をもつようになってコントロール可能な範囲が増えるということと、
失敗を失敗と判断する年代が40代以上では自分より上にあんまりいなくなることが強いでしょう。
転職したてで、破綻しかけている基幹システムの改修PJTを3か月以内に行ってくれと言われたことがありますが、その時の上司は「俺がやればできるけどね」と言っていました。
そもそも、2年前に起案したPJTでギリギリになるまで、放置されていた塩漬け案件でした。
彼の目線ではその問題を解決するための手段が「私の採用」であり、その案件が失敗になるかどうかは「私次第」とある種、責任は私に渡すことができたわけです。
会議では「彼がやるので」と言って回っていたそうです。
やりたい放題に見えるかもしれません。
でも、そんなことを言っても仕方ありません。
彼の目線では「私がダメ」でも別の人を採用すればよいと、別のオプションがある、つまり「コントロール可能」な状態でしたが、私は「やるしかない」状態だったわけです。
結局、頭を下げてでも、期限を延ばしにいく他ありませんでしたが、それだけでストレスは大分改善しました。
同じ課題で同じPJTに向き合っていても、コントロールの可否だけでストレス度合が全然違ったんですね。
ストレッサーの種類
ストレッサーについても、もう少し詳しく見ておきましょう。
実は、ストレッサーにも様々な種類が存在しており、
「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)、「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)、「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)があります。
ストレッサーの種類 | |
---|---|
物理的ストレッサー | ・暑さや寒さ、騒音や混雑など |
科学的ストレッサー | ・公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など |
心理・社会的ストレッサー | ・人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など |
特に、心理的ストレッサーに関して言えば、「~するかもしれない」という思考がストレッサーとして作用すると考えられています。
例えば、「仕事で失敗するかもしれない」「あの人に嫌われているかもしれない」な否定的な予想や評価が、アンコントローラブルな状況を想起させ、ストレス反応として表れたりします。
しかも、質の悪いことに、その状況から抜け出そうとあれこれ考えることで、「悪い状況にいる」「でも打開できるイメージはない」が前提の思考が続き、さらに否定的な予想がループ、ストレス反応が継続してしまいます。
仕事関連で問題になるのは、多くがこの心理・社会的ストレッサーですね。
30代は中長期な成果かつ影響力の大きい業務を手掛ける機会が増えてくる以上、どうしてもこの割合が大きくなります。
基本的には、原因となったストレッサーを排除すると、ストレス反応は徐々に改善していきます。
ストレッサーだと感じることが複数ある場合、影響度の大きいものを改善していくだけでも、効果があるでしょう。
ストレスが続くと
ストレスが続いてしまうと、さまざまな障害や疾病に進んでしまうことになります。
次のような症状が出ていたら危険信号ですよ。
適応障害: ストレスのために普通の生活に適応できない
精神的障害: うつ病や神経症など感情が不安的になり、生活に支障が生じる
心身症: その発生と経過に心理的ストレスが関係している身体面の疾患
燃え尽き症候群:仕事や生き方に献身的に打ち込んだが、期待した結果が得られないことにより
もたらされた極度の疲労と感情の枯渇状態を主とする症候群
外傷後ストレス障害:通常の人が体験する範囲を超えた出来事を体験し、その反応として
持続的な恐怖感や無力感、記憶の障害、身体の不調が生じる。
これらは、基本的に併発しますので、放っておくとどんどんひどくなります。
心にできた傷でもあるので、傷ができた環境で同じように過ごしていると悪化しかしません。
そういう症状が出たら休むか、気分転換するか、誰かに話を聞いてもらうか、などで負担を軽減するしかありません。
障害をお持ちの方や産後鬱だった方を部下に持ったことがありますが、普段は優秀だけどご家庭の負担が大きくなると、とたんに仕事が手につかなくなることを繰り返していました。
家庭がしんどいのであれば、仕事場が何も考えなくても、仕事ができる環境にしてあげようと、淡々とこなすだけで成果が出せるような状況にしてあげて、定期的に全員と面談の場を持つようにしたところ、それだけでバランスが取れて、社会復帰できましたと何人かに言われました。
症状が出ているのに、改善をしようとしないのは、傷を負って手当をしないのと同じですよ。
向き合うべきストレスとそうでないストレス

昨今ではストレスを活用するということも積極的に議論されています。
特に、ストレスは成長痛でもあるという視点や、ストレスを乗り越えた先に集中できる、いわゆる「ゾーン」に入ることもあります。
ただ、今まで見てきたようにストレスのかかる仕事で潰れてしまうことがあるのも事実です。
そこでここでは向き合うべきストレスとそうでないストレスに関連する論文を紹介します。
紹介論文は東京大学の池田めぐみ教授達の「チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサーが
若年労働者の業務能力向上と情緒的消耗感に与える影響」になります。
チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサー
結論からお伝えすると、チャレンジストレッサーは向き合った方がよくて、ヒンドランスストレッサーは避けた方がいいストレスと言えるかもしれないという内容です。
まずは、チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサーとは何かを確認しておきましょう。
チャレンジストレッサー:
チャレンジや充実感や生きがいを生み出すストレッサー
ヒンドランスストレッサー:
組織内で個人が目標を達成したりパフォーマンスを向上させたりすることを妨げるストレッサー
チャレンジストレッサーは、業務上の負荷や時間のプレッシャーなどが該当します。
対して、ヒンドランスストレッサーは、社内政治や役割曖昧性、雇用の不安などがそうです。
30代の場合は、自分の仕事で完結せずに他の部署との交渉ごとが急に増える時期ですから、ヒンドランスストレッサーも自然と増えてしまいます。
では、なぜヒンドランスストレッサーが悪影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
レジリエンス(回復力との関係性)
前の章で解説した通り、ストレスはストレッサーを評価して起こる心身的反応でした。
つまり、ストレッサーは存在していて、攻撃はしてくるわけですね。
そこに重要になるのは、レジリエンス(回復力)です。
攻撃してきたストレッサーに負けてしまったら評価も何もあったものではないですから。
ここで、ストレス状況からのレジリエンス(回復力)を手助けするのはどちらかというと、チャレンジストレッサーの方で、ヒンドランスストレッサーはそれを妨げることが研究からわかっています。
業務上の負荷は、乗り越えたにせよ乗り越えられなかったにせよ、やがてレジリエンスにもなるが、社内政治などのコントロールできないストレスは、レジリエンスにはつながりません。
つまり、ストレッサーに対しての回復力の観点からは、チャレンジストレッサーの方がよいということになります。
パフォーマンスを高めるかどうか
次にそうした回復力は仕事のパフォーマンスにどう影響するかです。
それぞれのストレッサーがレジリエンスを通して、仕事のパフォーマンスを上げるのか下げるのかを調べてくれています。
実はこの観点でも、チャレンジストレッサーはパフォーマンスを高めることが分かっており、
逆にヒンドランスストレッサーは、情緒的消耗感を感じさせてしまうことが分かっています。
ここまでをまとめると次の図の通りになります。

業務上の負荷などのストレスは「できるようになった」という自己肯定感につながるため、ある程度必要ですが、
社内駆け引きなどの自分でコントロールできないストレスは、パフォーマンスまで下げてしまう。ということですね。
レジリエンスおよびパフォーマンスとの関連についても「状況をコントロールできるかどうか」というポイントが大事であることが分かります。
社内駆け引きなどの状況で、自分のパフォーマンスが下がっていると感じたら、上司に相談するか転職を検討することも一つの手段でしょう。
ご自身が潰れてしまう前に、心身の不調アラートに気を付けるようにしてくださいね。
社会人を始めたての頃にあった身近な人が鬱になったときの話をしますね。
新卒として入社した会社で、初期配属だったのは激務の部署でした。
その部署では終電まで仕事をして、週6~7での勤務、飲み会終わりでも出社するという今ではあまり褒められない仕事の仕方が普通でした。
鬱になった人はその部署に元からいたベテランで、組織がリニューアルされる前はそんな状況ではなかったようです。
リニューアルのタイミングで入った新卒だったので、そこにあてがわれたので、私自身はそんなものなんだろうと諦めでもなく、受け入れていました。
ですが、ベテランは違ったんですね。
こんな状況はおかしい、なんとかしなければ。と私の教育も、上司への掛け合いも、なんとかしようと努力していました。
結果、無残にも敗北。
結局、そんな環境に耐えきれずに、人事に駆け込んで半年間休職という道を辿りました。
今、思い返すと「チャレンジストレッサー」と「ヒンドランスストレッサー」の両方があったんですね。
「チャレンジストレッサー」は過酷な労働環境、「ヒンドランスストレッサー」は要望を聞き入れない上司とその状況と一緒に戦わない新卒。
最終的に「状況をコントロールできない」と明確になってしまい、メンタルに不調をきたしてしまったんだと考えられます。
少なくとも、あの時味方になっていれば違ったのかなと考えさせられてしまう経験でした。
ストレスを上手に解消する方法

ここまで見てきたように、状況をコントロールするストレスとは向き合ってほしいです。
とはいえ、しんどいものはしんどいので、ここからは参考までに、ストレスを解消する方法をいくつかご紹介しますね。
できそうなことがあれば、無理のない範囲で試してみてください。
運動を取り入れる
ストレスを解消するためには定期的かつ適度な運動が効果的です。
運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールを減少させ、エンドルフィン(幸福感をもたらすホルモン)の分泌を促進します。特に、ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い運動は、心身をリフレッシュさせる効果があります。
毎日20分の散歩や、週に2~3回の軽いランニングを習慣化すると、心が軽くなりますよ。
自然と触れ合う
自然に触れることは「自然療法」としても知られ、科学的にもストレス軽減効果が証明されています。
自然の中に身を置くと、血圧が下がり、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減少します。また、自然の景色や音は心を落ち着かせ、リフレッシュする効果があります。
森林浴や近くの公園を散歩する、ガーデニングなどでも癒し効果を得ることができるでしょう。
マインドフルネスや瞑想を実践する
マインドフルネスや瞑想も非常に有効な方法です。
マインドフルネス瞑想は、今この瞬間に集中することで、過去や未来への不安を軽減します。研究によると、瞑想は脳の構造を変化させ、ストレス耐性を高める効果があります。
毎朝5分間、静かな場所で深呼吸をしながら瞑想をするだけでも、気持ちが落ち着きます。
ポイントは、今聞こえることだけに集中して他のことは考えないことです。
他人に話す
自分で抱え込まず、他人に話せる人は話すのがよいでしょう。
ストレスを言葉にすることで、脳はその問題を整理しやすくなります。また、他者とのつながりを感じることで孤独感が和らぎます。
同僚や友人、家族に悩みを話すだけでなく、場合によっては専門のカウンセラーに相談するのも有効です。
最近ではココナラなどのアプリでも、聞いてくれる人はいたりするので、活用してみてください。
睡眠の質を向上させる
睡眠とストレスについても相関があることが証明されています。
睡眠不足はストレスホルモンの分泌を増加させるため、ストレスが悪化します。逆に、十分な睡眠は脳をリセットし、冷静な判断力を取り戻す助けになります。
就寝前にスマホを見ない、寝室を暗く静かに保つなど、良い睡眠環境を整えることが重要です。
まとめ:知っておきたいストレスのこと
さて、この記事で紹介した内容を最後にまとめておきましょう。
ストレスを感じているなと思う方は、ご自身のストレスがどういう種類のものか確認してみてくださいね。
そのうえで、無理をしてでも「向き合う」べきか、向き合うべきでないから「距離をおく」か、判断してみるようにしましょう。
まとめ
- ストレスは現代では82.2%の人が感じている
- ストレスはストレッサーに対して、「自分の力で対処できない」と思ったときに心身の不具合として生じる
- 心理的ストレッサーは「~するかもしれない」という否定的な予期がきっかけになる
- 向き合うべきストレスはチャレンジストレッサー。向き合うべきでないストレッサーはヒンドランスストレッサー。
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