「上司からの評価がなかなか上がらない」
「上司に嫌われてるんじゃないだろうか」
上司が代わってそんなことを感じるようになった人も、今までそんなこと考えたことなかった人も、30代になると評価一つでキャリアの影響が大きくなるので、悩みの一つになっているのではないでしょうか。
そんな漠然としたモヤモヤ解消のためにも、この記事では「上司は何を考えて評価しているか」「どんな人を上げやすいのか」を解説していきます!
私自身の経験も踏まえているので、もう知っているよという方も改めて参考にしてみてくださいね。
上司の評価はあいまい?

人事評価の質は一定にできるのか
結論からいうと、人事評価は残念ながら、一定に保つことは難しいです。
基本的に人事が策定した評価制度に基づいてなされますが、評価項目によっては定量化できないものも多く、一定の尺度で評価をすることができないからです。
また、評価をする上司自身のものの見方、体調や当日の仕事量、気分によっても左右されることが研究結果で示されています。(評価者特異性効果と呼ばれています)
30名の部下を抱えている上司が20人目で同じテンションで評価ができるかというと、そんなことはありません。
もう20回アンケート答えてるようなもので、1人目にどんな評価をしたかなんてもう覚えてられませんから。。
部下側でどうこうすることができない要因でバラつきが生じるものと考えておくのがよいでしょう。
参考文献:アメリカ企業における業績評価制度の変革運動 (ノーレイティング)とその背景

上司も人間だから仕方ないんだろうけど、こっちとしては困るんだなぁ~
上司側も仕事の一環でしかない
上司からすると人事評価は定期的にやってくるタスクになります。
人事評価をきちんと行う人もいれば、適当に行う人もいます。
「忙しい時に何人もの評価をしてください。期限は何日までで、全員と面談してください」とある日全体発信で人事から言われるのですから、正直億劫にもなったりしますし、
こなれてきたらもうただの作業でしかなく、それほど考えることなく前の評価と同じにしておくことなどはよくあります。
しかも、人事評価は期が変わるタイミングだったりするので、一番忙しい時だったりするんですよね。。。
他にもたくさんの責任を負い、いろいろな案件が途中の中で、差し込まれる人事評価というタスクに、どれだけ時間をかけるのかはその上司次第です。
相手も忙しい中で、評価をする義務を負っているのだということは忘れないようにしましょう。

確かに、上司ガチャ感はあるんだなぁ~
評価ズレがどう起きるのか
評価ズレを防ごうとしても基本的に部下側でコントロールできません。
ここから評価ズレを起こす法則についてどんなものがあるのか少し見てみましょう。
確証バイアス
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。
「あいつは使えない奴だ」と思われるとそれが先入観となって評価に影響しうる。
ゲインロス効果
第一印象に反する行為をすると必要以上の評価をしてしまう心理現象。
不良が動物に優しい、東大卒が実は使えなかったなど、ちょっとした逆の一面だけで、その人の心象すべてに影響してしまう。
ダニング=クルーガー効果
能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越の錯覚を生み出す認知バイアス。
自分はスゴイと高く見積もる他責な上司ほど、部下を見下しやすくなってしまう。
ハロー効果
ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる(認知バイアス)現象のこと。
イケメンは仕事ができるなど、ゲインロス効果と相まって評価がばらつく要因になりうる。
フレーミングモデル
情報そのものよりも情報の伝え方が、考え方や選び方に影響を与えてしまう」認知的バイアスのこと。
すごく仕事ができる人なのに、おとなしく口下手なために評価に影響してしまうなどにつながる。
メラビアンの法則
コミュニケーションにおいて、人は言語情報(Verbal)から7%、聴覚情報(Vocal)から38%、視覚情報(Visual)から55%のウェイトで影響を受けること。
見た目を気にしていないと、せっかく成果を上げていてもその内容は伝わってこないことになる。
アンカリング効果
アンカーと呼ばれる先に与える情報が判断を歪めアンカーに近づく心理学の現象。
先出しの情報として、「彼女はもうすぐ結婚しそう」を伝えると「もうすぐ辞めるかも」という判断を想起させ、評価を上げても仕方がないなどの結果につながる可能性がある。
権威への服従原理
専門家や権威、地位のある人の指示や言動を信じてしまう傾向が共通して観察される法則性。
女性活躍を推進すると社長が言い出したら、女性の評価をこれまでよりも過剰に上げ、相対的に男性を下げるなどの事象にもつながる。

こうやって見ると、僕ではコントロールできないんだなぁ~
ここまで上司の評価事情について解説しました。まとめると次の通りです。

これはどうしようもないんだなぁ~
結局運要素になるんだなぁ~

いえ、そんなことはありませんよ!
評価の裏側を知っていくことで攻略は可能です!
次は上司がどういう気持ちで評価をしているのか見ていきましょうか。
上司の評価心理

評価がばらつきがあるんだということは見てきましたが、実はどうしてもそうしてしまう心理が上司側にはあります。
別に意地悪をしたくてしているわけではないんです。
ここからは評価をする人が置かれている状況から、バラつきを生む心理を確認してみましょう。
評価は相対的に決まってくる?
基本的に上司は部下全員を評価対象にしており、評価は相対的にせざるを得ません。
仮に、3人の部下を持つ上司がA~Dまでの評価をつけるシーンを想定しましょう。

全員をBランクにすると評価を適当にしている人と見られかねません。
ですので、上司としては「評価を分散させたい」心理がはたらくのです。
分散させようとしたときにAさんとBさんとCさんで何をもって評価するかといえば、3人を比べて評価するのです。
「Bさんの方がAさんより仕事ができるな」「Cさんの方がBさんより仕事ができるな」と評価対象者の中で、序列をつけてランクを決めるのです。
評価は、隣に座っている同僚と比較されて決まっているのです。

同僚には一層負けたくなくなったんだなぁ~
上司評価は自己評価に引きずられている
実は上司の評価は自己評価に引きずられる側面があります。
先ほどの例で見てみましょう。
あまり仕事ができないAさんが自己評価でAをつけてきました。
一方で、それなりに仕事ができるBさんが自己評価でDをつけてきました。

評価者である上司は、自己評価を書き直させるとハラスメントになりかねず、書き直させることができません。
ここで、上司評価としてAさんとD評価に戻すと、「A→D」になるので、本人も納得しないでしょうし、2次評価者からも「日ごろから評価軸をすり合わせていない」という見られ方をしてしまいます。
下からのハラスメント懸念と、上からの2次評価者の見られ方を気にした上司は、自己評価から「一つずらすだけ」に留めます。
つまり、Aさんを評価Bに、Bさんを評価Cにすることになり、上司が思う本当の評価とは異なる評価が下されることになります。
ここで気をつけないといけないのは、良い悪いにかかわらず、「能力とかけ離れた自己評価」を見ると上司の心象は悪くなりかねないことです。
高飛車になりすぎず、卑屈にもなりすぎず、バランスのよいラインで自己評価をするようにしましょう。

何も考えず、高くつければいいってもんでもないのは驚きなんだなぁ~
部下の業務領域は、上司の裁量権×上司の本音評価で決まる
では、部下の業務領域はどのように決まるかというと「上司の裁量権」×「上司の本音評価」で決まります。
また、先ほどのAさんBさんに登場してもらいましょう。

上司はさらにその上の上司から、この領域で仕事を進めるようにと裁量権を決められます。
基本的に部下への仕事の割り振りはその裁量権の範囲から行われます。
先のAさんは上司評価はBで、Bさんは上司評価はCと、Bさんの方が評価は下でした。
ところが、裁量権はそれとは関係なく、「上司が仕事を振りたいと思うか」によって決まるので、Bさんの方が大きくなります。
当然ながら、裁量権が大きい方が大きな仕事をやりやすく、実力もつくので、その後の評価は逆転する可能性も出てくるでしょう。
このように、「人事面談での上司評価」と「上司の本音評価」は別モノになり得て、
部下の仕事の範囲は、「上司の裁量権」×「上司の本音評価」で決まるのです。

上司との関係性がいかに重要か分かるんだなぁ~
ここまで評価者の心理について解説しました。まとめると次の通りです。

なるほど、人事評価も制約があるんだなぁ~

そうなんです!ポイントは「相対」ですね!
比較対象があって初めて何かを評価することができることを押さえておきましょう。
評価の本音

評価者が置かれている状況については確認できたかなと思います。
では、評価者の本音評価とは具体的に何をみているんでしょう。
ここからは、評価をする人が何を見て評価を下しているのか、何が評価を左右しうるのか、その内容についてみてみましょうか。
結果だけでなく「プロセス」も見ている
本音: 「成果が大事だけど、その過程も評価に影響する」
数字や成果は評価の柱ですが、結果を出すまでの過程も重視されます。
たとえば、チームを巻き込んだ努力や、誠実な仕事ぶりはプラスに働きます。
実はこれは上司のバイアスにつながったりするんですね。
評価項目にない場合も多かったりするのですが、先ほどの例でいうAさんになるかBさんになるかに関わってきます。
上司も人間ですから、頑張ってる人は応援してあげたくなりますし、マネジメントの観点から言えば、チームのモチベーションを上げて生産性を上げるためにも、頑張ってる人の評価を下げることはしづらいですからね。
上司の本音評価を少しでも上げておくためにも、結果だけでなく、そこに至るプロセスもなるべく好印象になるよう心掛けましょう。

やはりプロセスも重要なんだなぁ~
上司自身の立場も考慮している
本音: 「部下の評価は上司の評価にも影響する」
上司は自分の部下を高評価にすることで、上層部から「良いチームを作っている」と見られたいという意図があります。
上層部から良いチームを率いていると判断されれば、チャンスをもらいやすくなりますし、自分も含む全員の評価を上げやすくなるので、当然の心理ですね。
ただし、逆に部下のパフォーマンスが悪いのに人事評価だけ上げていると上司自身の評価が下がるため、厳しい目で見ざるを得ないこともあります。
結局のところ、なるべく評価が高いチームを持ちたい思いとは裏腹に、能力と評価はバランスよくつける必要があるというジレンマに直面しています。

確かに、味方を変えれば上司の仕事は部下の仕事の集合体なんだなぁ~
周囲からの評判を重要視する
本音: 「チームや他部署での評判が高い人は評価しやすい」
上司一人の意見だけでなく、他部署や同僚からのフィードバックも評価に影響します。
普段から悪口を言っている人、自分の仕事だけを遂行しているけど他のチームに迷惑をかけている人、勤務態度が悪い人はたとえ結果を出していても、評価は上げづらいですし、そんな事したら暴動が起きるかもしれません。
昔、新入社員で夜遅くまで残っている=仕事をたくさんしている。評価されるはずと思っていた子がいました。
ただ、彼は分からないことを聞かず、自分で調べて調べて期限ギリギリまで仕事をし、残業代はしっかりと貰って、「あー、仕事忙しい。おれ大変なんで」と言っていました。
それに付き合わされていた関係部署から「遅い」「連絡が返ってこない」と文句を言われていたのですが、本人はお構いなしに、「自分は頑張っています。評価してください」と言ってきました。
残業代まで出して、ボーナスまで出せるかと、しれっと評価を下げたことを覚えています。
特に、周囲との関係が良好で「一緒に仕事をしたい」と思われる人は、評価が上がりやすいです。
そうした人は、2次評価者からも評判が良かったりするので、評価を上げやすいんですよね。

評判悪い人を評価は確かにできないんだなぁ~
日頃の印象が大きく影響する
本音: 「評価期間中だけ頑張っても、普段の印象が悪いと厳しい」
人事評価の期間にだけ目立つ成果を出しても、日常的な態度や行動が評価に反映されるため、普段からの振る舞いが重要です。
普段から積極的で誠実な人は、多少の失敗があっても「安定して信頼できる」と評価されるでしょう。
この仕事お願いしていいかな?とお願いしたときに、「はい。分かりました」という人とそうでない人では全然違います。
20代の頃は出来ていても、状況が変わり、中堅になったり仕事の難易度が上がってくる30代になるとできなくなることがありますので気をつけたいポイントです。
なるべく面倒くさがらず、対応できることは率先して行い、できないことは優先順位をつけて対応する。基本的なことですが、再度徹底してみてください。
日常的な態度が悪い人は、周囲からの評判も良くないので、評価はしづらいでしょう。

そういう人は同僚目線でも評価してほしくないんだなぁ~
上司との相性が影響することもある
本音: 「相性が良い人は評価しやすい」
上司と部下の価値観や仕事スタイルが合っていると、自然と評価が高くなることがあります。
逆に、上司が細かい報告を好む場合、それを怠る部下は評価が下がりやすいなど、相性が悪いと公平な評価が難しくなる場合もあります。
今まで時間をかけてミスなく遂行するような経理の部長が、企画部門の部長になり、スピードを重視するような仕事のやり方を理解できず、この部署が行うべき仕事ではないと判断を下し、チームを解体させたことがありました。
チームを解体させられた人たちは、それを不服として、全員退職に至ることとなり、結局その部長は3か月で経理部長に戻されることとなりました。
上司が部下の仕事を理解できないことで起こった悲劇の一つといえるでしょう。
上司のスタイルに合わせて仕事の進め方が切り替えられるように引き出しを増やしておくことが理想的かもしれませんね。

上司ガチャは不可避だから対策打つしかないんだなぁ~
成長意欲を見ている
本音: 「現状維持ではなく、成長しようとする人を評価したい」
上司は部下の成長を支援する立場にあります。
部下の育成によって、仕事の成果を上げることもマネジメントの一貫として求められるているからですね。
基本的にチーム長としての立場は、部下の「生産性の最大化」です。
少ない時間で最大限の成果を上げられるようにしましょうというミッションですね。
そのときに、モチベーション高く、仕事をしてくれる方がいいのは間違いないですから。
また、仕事の内容もさまざまなものが降ってくることでしょう。
自分を成長させることで様々な仕事に対応できるようにしておく人は、上司からも信頼を得られやすく、仕事も任せやすくなるので自然と評価が高くなります。
そのため、評価としては安定して仕事をこなすだけでなく、新しいスキルを学んだり、責任のある仕事に挑戦する姿勢を重視します。
人事評価の項目にも大抵入ってくるので、アピールできる何かを作っておくといいですね。
逆に、言うことを聞かない、副業ばっかりやってる、今までの経験だけでなんとかしようとしているなどは、評価はしづらいでしょう。

成長してない人は未来にも期待できないんだなぁ~
これも同僚との相対なんだなぁ~
上層部への説明のしやすさを考慮する
本音: 「評価を上に説明できる根拠が欲しい」
上司が部下の評価を上層部に報告する際、客観的な成果や具体的なエピソードが求められることがあります。
「なぜこの人をこのような評価にしたか」を説得しなさいという意図ですね。
特に、業績が悪かったり、上層部に上がってきた評価が横ならびで高かった時などにそうしたことが起こります。
そこで客観的に説明できないと上層部としてバランスよく濃淡をつけるべく、評価を落とされてしまう可能性が出てきます。
「休眠顧客への提案をしっかりと行い、売上に貢献しました」よりも
「7千件の休眠顧客のうち、78%に連絡を取った結果、そのうち20%と再契約し、売上を1000万ほど伸ばすことができました」
の方が、どれだけ頑張ったかを測りやすく伝えやすくなります。
そのため、評価を上げるには「数字や具体的な成果」を見える形で残しておくことが重要です。
何より残しておかないと3年もしたら、覚えていられなくなるかもしれませんから。。
一緒に具体的なエピソード作りに協力してくれる上司もいますが、基本的には自分でアピールできる内容を作り、相談するようにしましょう。

確かに「評価高いチームがいい」なら上げていく根拠は欲しくなるんだなぁ~
短期的な成果よりも「長期的な貢献」を重視
本音: 「将来的に会社に貢献できる人を評価したい」
目先の成果だけでなく、長期的に会社に利益をもたらす人材かどうかを見ています。
特に30代以降では、専門性やリーダーシップがある人が評価されやすいです。
そんな期待を込めた人材が3年後には退職するかもしれないと思うと、評価を上げるでしょうか。
一般的には、3年後に辞めるAランクよりも、長く続けて成果を出し続けてくれるBランクを評価します。
それは、将来的にAランクになるかもしれないという期待と、そのAランクが抜けた後の穴埋めの方が大変だからですね。
Aランクが抜けたときに、評価されおらずモチベーションの低いBランクが残る状態を作るなら、最初からBランクのモチベーションを上げて、Aランクのモチベーションを下げてでもバランスを取っておくほうがリスクは少ないという思考ですね。
退職を匂わせるのは、昇給に対する一つの交渉テクニックではありますが、中長期の貢献のために、自発的に積極性を発揮していく30代の方が昇給させやすいです。

その方が上層部への説明もきっとしやすいんだなぁ~
信頼感がある人を評価しやすい
本音: 「この人なら安心して任せられると思える人が高評価」
上司にとって、部下が信頼できる存在であることは非常に重要です。
特に以下のような行動が信頼感を高めます。
- 報告・連絡・相談が適切にできる。
- 仕事を最後まで責任を持ってやり遂げる。
- ミスを隠さず、迅速に対応する。
難しい仕事をバンバンこなしていても、勤怠だったり、ミス隠しをしたりと、しょうもないことで評価を下げられる可能性もありますからね。
基本に忠実にしていくようにしましょう。

確かに、信頼できない人を上げても評価の正しさが後から言われそうなんだなぁ~
ここまで評価の本音について解説しました。まとめると次の通りです。

確かに言われてみれば当たり前のことではあるんだなぁ~

そうなんです!
ただ、仕事となる自分のことでいっぱいいっぱいで見られ方まで意識できなかったりしますからね。
少し意識するだけでも変わるのでぜひ試してみてくださいね。
まとめ
さて、ここまで評価に関する事情について解説してきました。
いろいろあったので、最後に整理しておきましょう。
まとめ
- 上司の評価は均質化できず、バラつきを生む要因は部下ではコントロール困難
- 評価者は、チーム内で比較される(相対)ことで決まる
- 評価者がする評価自体も、周りから見られている
- 部下の仕事の裁量権は、「上司の裁量権」×「上司の本音評価」で決まる
- 上司の本音評価は日ごろの部下との関係性の中で構築される
ぜひ、評価者の心理を知り、人事評価UPを目指してみてくださいね。
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